池崎 弘之(いけざき・ひろゆき)
副院長・麻酔科・非常勤
副院長・麻酔科・非常勤
私たち麻酔科医は、麻酔科医の行う術中管理という意味においては、外科医や内科医のように直接患者さまの病気を治すことはしません。しかし、それに勝るとも劣らない大切な役割を担います。それは「外科手術の流れを変えることなく患者さまの安全を守ること」です。
心臓病の手術は皮膚を切開し、骨を切離し、心臓にメスを入れます。考えてみるまでもなく、生体には非常に大きなストレスがかかります。患者さまは手術中に意識はありませんが、体はストレスに反応し、さまざまな臓器に炎症反応を起こします。この炎症反応が術後の臓器合併症につながっていくのです。
現代の麻酔は痛みのみならず、この生体のストレス反応をいかに抑制するかを実践してゆきます。
麻酔科医の仕事はサッカーでたとえるならゴールキーパーです。サッカーのフォワードは点をとるために果敢に攻めてゆきます。たとえば10本のシュートを打ったとして1点でも入ったらそれはそれで評価されるでしょう。しかし、ゴールキーパーは1点でも取られたら、自分の使命を完璧に果たしたことにはなりません。
外科医なら成功率が50%の手術でも、患者さまやご家族が「やってください」と切望されれば、全力で執刀するでしょう。一方麻酔の場合は、たとえ成功率が10%の手術でも、100%確実な麻酔をしなければなりません。
手術はキズを残しますが、麻酔はキズを残しません。その意味では無形の医療行為でもあります。私はこの無形なところが逆に腕の見せどころであり、そこに麻酔の魅力を感じてしまうのです。
麻酔科医が手術でのゴールキーパーであると述べましたが、麻酔科医に必要なことは、要するに負けないことなのです。勝たなくてもいい、でも負けてはならないのが麻酔科医の仕事です。99勝1敗より100戦全戦引き分がいいのです。麻酔にファインプレーはいりません。しかし絶対にしくじってはいけません。
私のモットーは「誰にでもできることを、誰もできないくらいうまくやること」です。そしてこれを毎日実践することが大事だと思っています。私は学生時代、ライフガードをやっていました。普段は浜辺でビーチガールを眺めて楽しいのですが(笑)、いざ誰かがおぼれたら即座に救助に向かいます。救助にはそれなりの体力、技術が必要で、いつ起こるか分からない非常時に備えて毎日夕方から夜にかけて3時間くらいトレーニングを重ねていました。
麻酔科医の仕事も比較的ライフガードのそれに似ています。何も起きなければ、それこそ駆け出しの医師にもできるくらいシンプルな麻酔で終わることもあります。しかし、何かあったときには実力が試されます。麻酔科医は常に何かの異変に対応できるように知識と技術を備えておく必要があります。またさらにこれらに経験を加え、知恵と技を自分なりに練っておく必要があります。
麻酔科医はさまざまな外科医の手術に立ち会っていますので、手術を見ればどの外科医の腕が立つか分かってしまいます。意外と外科医のほうが自分の手術、あるいは先輩医師の手術など一部の手術しか見ることはできないので、他の外科医の手術について知らないことがあるかもしれません。
麻酔科医の見地からいいますと、当院の外科医の手術はシンプルで無駄な事をしない。手術は本来、こういうものなのだということを実感させてくれます。世界標準だと思います。当院の外科医、麻酔科医、手術室看護師、臨床工学技士(ME)が一丸となって、患者さまが安心して手術を受けられるよう日々努力しております。是非、われわれを信頼していただき当院をお訪ねください。
経歴 |
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免許・資格 |
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