言語療法(ST)
言語療法とは
ことばによるコミュニケーションには言語、聴覚、発声・発音、認知等の各機能が病気や事故、先天性・加齢等で不自由になり、それによって、社会生活上必要とされるコミュニケーション、嚥下(飲み込み)の障害に対して用いる治療法です。
言語聴覚療法とその対象疾患
脳卒中や頭部外傷によって脳に損傷を受けると、言語などのコミュニケーションに必要な機能や食べる能力に障害をきたすことがあります。
言語聴覚士(ST)は、言葉や飲み込みに障害を持った方々に対して、各機能の改善を促進させる訓練、残存能力を利用した日常生活および社会生活を営むための援助など個々の症状に合わせた訓練や指導及びご家族に対しての助言を行っています。
対象疾患としては、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、頭部外傷、脳腫瘍、脊髄小脳変性症、パーキンソン病などがあります。
コミュニケーション
失語症に対する訓練
失語症とは?
脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷などにより左脳(言語野)に損傷を受けることで以下の症状がみられます。
- 会話の内容が理解できない
- 言葉が出てこない、言い間違える
- 文字を理解できない、書くことができない
- 計算ができない
失語症の方には、障害された言語機能(話す、聞く、読む、書く)の改善促通を目的とした訓練や、残存された能力を応用しコミュニケーションをスムーズに行えるよう工夫をします。
構音障害に対する訓練
構音障害とは?
脳に損傷を受け、舌や口唇、喉などに麻痺生じる、呼吸する力が低下することで以下の症状がみられます。
- 声が小さい
- 声が出しにくい、ガラガラした声になる
- 呂律が回りにくい
- 長時間話すと疲れる
構音障害の方には、障害された舌、口唇、喉、呼吸などの発声発語器官機能の障害の改善促通を目的とした訓練を実施します。
その他の高次脳機能訓練
高次脳機能障害とは?
脳に損傷を受け、脳の機能に障害が起こることを総称して「高次脳機能障害」と言います。 その中でも、さらに障害の種類が細かく分かれており、注意、記憶、遂行、視覚的・聴覚的認知などといった症状が出現します。
注意障害とは? |
注意力や集中力の低下するために、物を見つける力やいくつかのことに注意を向けることが上手くいかなくなる症状 |
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記憶障害とは? |
見たこと、聞いたことを覚える力が弱まった症状 |
遂行障害とは? |
段取りや手順が効率よくできなくなる症状 |
視覚的認知障害とは? |
損傷された脳と反対側に意識がいかなくなる症状 「左半側無視」は右脳、「右半側無視」は左脳が障害された場合起こる症状 |
高次脳機能障害の方には、障害された症状に対し改善促通を目的とした訓練を実施します。
摂食・嚥下
摂食・嚥下障害に対する訓練
摂食・嚥下障害とは?
脳の損傷や加齢などにより、飲食物の咀嚼や飲み込みが難しくなることで以下の症状がみられます。
- 水分や食事でむせる、呼吸が苦しくなる
- 上手に飲み込めない
- 食事後にガラガラした声になる、痰が絡む
飲み込みの状態より食事の硬さなどの検討、訓練を行います。医師、看護師、管理栄養士、医療相談員、リハビリスタッフなどが連携し、安全に食事が行える方法を検討しています。必要に応じては嚥下造影検査(VF検査)を実施し、詳細な飲み込みの評価を実施しています。
このような症状に対し、症状の改善促通を図る訓練を実施しています。話し言葉以外のコミュニケーションの方法として会話カード作成など補助手段の検討やご家族へコミュニケーション方法の助言などを行っています。
退院後に必要なコミュニケーション訓練(電話や買い物など)や自主トレーニングの指導を行っています。高次脳機能や摂食・嚥下障害に対しても同様に適した環境設定や自主トレーニングの指導を行っています。言語療法のみではなく他職種が連携し援助を行っています。