健康診断の見方VIEW OF HEALTH CHECHKUP

胃(レントゲン・内視鏡)

健康診断の見方のご案内

胃がん検査

胃部レントゲン検査

胃部レントゲン検査は、造影剤(バリウム)を飲み、食道から胃・十二指腸までの形や表面の性状を調べる検査です。

胃部内視鏡検査

胃の内視鏡検査とは、口や鼻から内視鏡の細い管を通し、胃の内部を直接診ることによって小さな病変まで確認することができる検査です。

所見名 所見説明
当施設で頻度の高い所見
胃腸上皮化生
(イチョウジョウヒカセイ)

萎縮の進展に伴い胃粘膜が腸上皮類似の上皮に置き換わった状態です。内視鏡的に前庭部(胃の出口付近)中心に散在する灰白色の扁平隆起として認められます。胃癌(特に分化型胃癌)の発生母地と考えられ、内視鏡による経過観察が必要です。

胃粘膜下腫瘍
(いねんまくかしゅよう)

胃粘膜の下の層から発生したこぶ状または陥凹した腫瘍性病変です。良性と悪性のものがありますので、一部のものを除いて内視鏡などの精密検査が必要です。良性と確認できたものも形や大きさの変化の有無の経過観察を行います。

胃ポリープ(胃底腺ポリープ以外のポリープ)

胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃底腺ポリープ以外に過形成、腺腫などの種類があり、初めて指摘された場合は内視鏡などの精密検査が必要です。

胃隆起性病変(ポリープを除く)
(いりゅうきせいびょうへん)

胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃癌や悪性の粘膜下腫瘍も含まれます。内視鏡などの精密検査が必要です。

(逆流性)食道炎
(しょくどうえん)

食道粘膜の炎症です。胃液の逆流、カンジダなどの感染や過度の飲酒などで起きます。胸やけや胸痛などの症状があれば治療が必要です。

食道裂孔ヘルニア
(しょくどうれっこう)

食道が横隔膜を通り抜ける間隙である食道裂孔から、本来腹腔内にあるべき胃が胸腔内に入り込む状態を言います。胃酸などの胃内容物が食道へ逆流し、逆流性食道炎を起しやすい状態です。症状があれば治療の対象になりますが、内服治療が効かない場合は手術療法を考慮する場合があります。

憩室
(けいしつ)

管腔が一部洞穴状に陥凹したものとして認められます。内腔は正常粘膜に覆われています。放置してもよく、治療の必要はありません。

バレット食道
(ばれっとしょくどう)

下部食道の扁平上皮が胃粘膜に近い円柱上皮に置き換わった状態をバレット食道といいます。前述の逆流性食道炎が主な原因とされています。欧米では食道腺癌(バレット腺癌)の前癌状態と考えられています。軽度の場合は放置しても差し支えありませんが、経過観察が必要になることもあります。

その他の所見
圧排像
(あっぱいぞう)

胃の周囲の臓器や腹腔内の腫瘤によって、袋状の胃が外側から押されて内腔側に窪んだ所見です。胃壁まで病変が及んでいなければ、輪郭は平滑です。呼吸や胃の伸展度により部位や形状が変化します。

アカラシア

食道から胃にかけての筋肉機能障害により、摂取した食物をうまく胃に運べない病態です。内視鏡などの精密検査が必要です。

胃潰瘍
(いかいよう)

胃粘膜の欠損(陥凹)した良性の病変です。出血する場合がありますので内視鏡などの精密検査が必要です。

胃潰瘍瘢痕
(いかいようはんこん)

胃潰瘍が治り、胃粘膜が修復された状態です。年1回の経過観察で良いです。

胃癌
(いがん)

胃粘膜に発生した悪性腫瘍です。診断は組織の一部を採取して行う病理検査(生検)で確定します。検診を毎年受診することで発見される胃癌の80%以上は早期癌でほぼ100%の生存率です。また最近では早期癌の大半が内視鏡手術で治癒しています。さらにピロリ菌感染者の場合、胃がんの治療とともにピロリ菌除菌を行うことで胃がんの再発率も減少することが分かっています。

胃癌疑い
(いがんうたがい)

胃癌が疑われる所見です。内視鏡での組織検査(生検)で確定します。X線検査では、僅かでも胃がんの疑いがあれば、積極的に「胃癌疑い」として内視鏡での精検を勧めています。

胃陥凹性病変(胃潰瘍を除く)
(いかんおうせいびょうへん)

胃粘膜の欠損(陥凹)した病変で、良性または悪性の胃粘膜下腫瘍や胃癌が含まれます。内視鏡などの精密検査が必要です。

胃憩室
(いけいしつ)

胃壁の一部が外方へ袋状に突出したものです。多くの場合、放置してかまいません。

胃その他

上記以外の病変で、消化管間質腫瘍や消化管外腫瘍などがあります。

胃底腺ポリープ
(いていせん)

胃の上中部にできる1cm以下の小さな半球状の隆起(ポリープ)です。複数あることが多く、良性です。多くの場合、放置してかまいません。

胃びらん(表層性胃炎は除く)

胃のびらんは、潰瘍よりも軽度の被覆上皮欠損と定義されるものです。つまり、一番表面の組織である「粘膜組織」が欠損している状態を指します。胃酸過多による炎症やストレス、飲酒などで起こることがあります。

陰影欠損 (辺縁が断裂している場合、充盈像でなくても表現可)
(いんえいけっそん)

主として充盈像(胃をバリウムで充盈して撮影した画像)で、内腔を満たしたバリウムの一部が欠損した像です。辺縁に見られることがほとんどですが、臥位では胃の中央部に見られることもあります。まず、進行した癌や後述する胃粘膜下腫瘍が疑われますが、大きな良性ポリープで見られることもあります。

十二指腸潰瘍
(じゅうにしちょうかいよう)

十二指腸潰瘍は、ピロリ菌や非ステロイド性抗炎症薬、胃酸などによって、十二指腸の粘膜が傷つけられ、粘膜や組織の一部がなくなる病気です。主に十二指腸の入り口である球部に出来やすい特徴があります。

十二指腸潰瘍瘢痕
(じゅうにしちょうかいようはんこん)

十二指腸潰瘍が治り粘膜が修復されたときにできた変化です。

十二指腸憩室
(じゅうにしちょうけいしつ)

十二指腸壁の一部が外側に向かって袋状に拡張した状態です。特に問題ありません。

消化管術後

がんや潰瘍などに対する消化管の手術後の形態変化を指します。

食道がん

食道にできる癌などの悪性腫瘍の総称です。診断は組織の一部を採取して行う病理検査(生検)で確定します。早期発見・早期手術で救命できます。さらに極早期だと内視鏡手術も可能です。

食道がん疑い
(しょくどうがんうたがい)

食道のがんが疑われる所見です。内視鏡などの精密検査での確認が必要です。

食道陥凹性病変
(しょくどうかんおうせいびょうへん)

食道内腔に対して陥凹した(へっ込んだ状態)病変の総称です。食道癌、潰瘍、憩室などによる変化であり、内視鏡検査などによる精密検査が必要です。

食道陥凹性病変疑い
(しょくどうかんおうせいびょうへんうたがい)

食道陥凹性病変(上記参照)の疑いがありますので、内視鏡などによる精密検査が必要です。

食道憩室
(しょくどうけいしつ)

食道を構成する筋肉の層が弱いために食道の粘膜が食道の外側に突出した状態です。ほとんどは無症状であり、心配する必要はありません。

食道腫瘍(ポリープ含む)
(しょくどうしゅよう)

食道にできた粘膜面が盛り上がった腫瘤などの病変です。粘膜面から発生するものと粘膜の下から発生するものがあります。盛り上がりの性質を調べるために内視鏡検査などが必要ですが、前回と同様の指摘の場合は経過を観察します。

食道静脈瘤
(しょくどうじょうみゃくりゅう)

食道の静脈が瘤(こぶ)状に腫れた状態です。主として肝硬変や肝がんに伴い門脈の血流障害により生じます。破裂して大出血をきたすこともあり、内視鏡などの精密検査が必要です。

食道ポリープ

食道上皮から発生した基本的に良性のできものです。腫瘍性のものと炎症性のものがあり、いずれもまれにですが癌化することもあります。初回指摘の場合や増大傾向のある場合は内視鏡などの精密検査が必要です。

食道隆起性病変
(しょくどうりゅうきせいびょうへん)

食道の内腔に突出した病変の総称です。食道癌やポリープ、粘膜下腫瘍などによる変化であり、内視鏡検査などによる精密検査が必要です。

胆石
(たんせき)

胆汁内のカルシウムやコレステロールなどの成分によって形成された石です。胆のう内だけでなく、胆管にできることもあります。始めての指摘の場合は超音波検査等が必要になることもありますが、多くの場合は大きさや形状に変化がなく症状も無ければ経過をみるだけで十分です。但し、症状がある場合は手術も含め処置が必要になることもあります。

透亮像 (いわゆる”抜け像“のみでなく、付着すべき造影剤が弾かれている場合も含む)
(とうりょうぞう)

二重造影像で周囲に比べてわずかに造影剤(バリウム)がはじかれた所見です。丈の低い隆起を表しており、良性ポリープなどで多くみられます。胃癌(とくに早期癌)などでもみられることがあります。また、気泡や残渣などもよく似た所見を呈するので気を付けなければなりません。

 ニッシェ

潰瘍によって生じた胃壁の欠損(窪み)にバリウムがたまった所見です。側面像では消化管の辺縁から外側に突出してみえます。二重造影像や圧迫像でみられる正面像ではバリウムのたまりとして認められます。ニッシェの輪郭や辺縁の性状から良性潰瘍か悪性腫瘍に伴う潰瘍かを判別します。

粘膜不整 (造影剤付着不良、顆粒状、結節状、アレアの乱れ、等を含む)
(ねんまくふせい)

正常胃粘膜はX線検査では均一で微細な模様を呈していますが、その構造が乱れた状態を言います。慢性胃炎や比較的凹凸に乏しい胃がんなどが原因となります。

辺縁の不整 (二重輪郭、壁硬化、壁不整など、滑かな辺縁曲線の連続性が失われた所見全て含む)
(へんえんのふせい)

正常では胃の辺縁は滑らかな直線あるいは曲線ですが、病変があると、細かなギザギザや、複線化といって多重線や線が錯綜したようになります。これらをまとめて辺縁の不整と表現します。早期癌を発見する手掛かりになりますが、良性の潰瘍瘢痕などでもみられます。病変の輪郭が不整な時にも使うことがあります。

粘膜不整 (造影剤付着不良、顆粒状、結節状、アレアの乱れ、等を含む)
(ねんまくふせい)

正常胃粘膜はX線検査では均一で微細な模様を呈していますが、その構造が乱れた状態を言います。慢性胃炎や比較的凹凸に乏しい胃がんなどが原因となります。

変形  (弯入を除く:小弯短縮、伸展不良、狭窄、拡張も含む)

正常の胃は、バリウムやガスで伸展させると、鉤型(Jの字型)を呈しています。病変(とくに潰瘍や腫瘍)があるときにはいろいろな変形をきたします。例えば胃の上方の辺縁線(小弯)が短くなることを小弯短縮と呼びますが、小弯にまたがる線状潰瘍などが原因です。特徴的な変形についてはその原因がほぼ特定できます。

慢性胃炎(萎縮性、過形成、肥厚性など)
(まんせいいえん)

胃粘膜に炎症が慢性的に続くことを慢性胃炎と言います。慢性胃炎には胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎や、粘膜が凹凸になる過形成性胃炎、粘膜が厚くなる肥厚性胃炎などがあります。

弯入
(わんにゅう)

胃が適度に伸展したときに、辺縁にくびれが生じることがあります。原因は、胃壁の筋層の局所的な収縮です。生理的な胃の収縮運動では左右対称性のことがほとんどです。慢性の潰瘍や治癒した潰瘍、癌(特に進行癌)では、弯入によって病変の存在に気付くことがあります。急性のびらんや潰瘍でもみられることがあります。