脳神経外科(脳卒中センター)
①脳血管障害
脳梗塞
a)発症後の急性期治療
急性期治療
脳の血管が閉塞しても、急には脳梗塞に至りません。したがって脳梗塞になる前に閉塞した血管を再開通させることにより、脳梗塞を回避する事が出来ます。当院では24時間365日、脳梗塞に対して急性期治療が施行できる体制を整え、積極的に行っています。
- 血栓溶解療法
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本邦では2012年より発症後4.5時間以内の脳梗塞に対して行うことが出来る様になった点滴療法です。
投与前(左)は片側の脳全体を栄養する脳血管(黄)の描出がないが、投与後(右)は脳血管の再開通が確認される。
- 経皮的血栓回収療法
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カテーテルを閉塞した脳血管に誘導し、カテーテルから血栓を回収します。
血栓を回収する前(左)では閉塞した血管(黄)が、血栓回収療法により脳の血管が確認されます(中)。回収された血栓(右)。
b)発症後の慢性期治療
脳梗塞の中には、大きな脳梗塞の原因となる頚部から頭部の血管に異常がある場合があります。その様な症例では、大きな脳梗塞が生じない様に、病態に即した手術が施行される場合があります。頚部内頚動脈狭窄症に対する治療方法は、頚部内頚動脈内膜剥離術と頚部内頚動脈ステント留置術が存在します。両者には長所と短所が存在するため、病変や病態にあわせた治療方法の選択がされます。
- 頚部内頚動脈内膜剥離術
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頚部を切開し、頚部内頚動脈を露出します。その後に血管内に存在し血管狭窄の原因となっているプラークを摘出し、血管を拡張します。
術前(左)では頚部内頚動脈に狭窄病変(矢印)が確認されるが、術後(右)は狭窄病変が消失している。
頚部の頚動脈が露出され(左)、予定切開線に色素を付着している。プラークを摘出している(右)。
摘出されたプラーク。
- 頚部内頚動脈ステント留置術
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カテーテルを狭窄した血管に誘導し、カテーテルからステントを留置します。プラークを血管に押しつけ、血管を拡張させます。
頚部内頚動脈に狭窄所見(矢印)が確認される。
ステント挿入により狭窄所見が改善している。
- バイパス術
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脳の血管が徐々に狭窄して閉塞に至る場合、体の防御反応による自己バイパスが作成され脳梗塞に至らないように自衛します。しかしその自衛も限度があり、遂には脳梗塞に至ります。その様な症例では、脳梗塞が再発する可能性が高いため、バイパス術を施行します。
バイパス術はもやもや病に対しても行います。もやもや病は、脳梗塞や血管破綻で脳出血が生じる難病で、バイパス術により脳梗塞や脳出血の再発を予防が期待できます。そのバイパス術は、浅側頭動脈(こめかみに触れる頭皮を栄養する血管)を用いた直接血行再建と側頭筋(こめかみの筋肉)や硬膜(脳を包む膜)など用いた間接血行再建を併用した複合的バイパス術を施行します。
術前(左)は中大脳動脈(黄点線)の描出不良があるが、術後(右)は、浅側頭動脈(白矢印)が中大脳動脈にバイパスされ描出改善している。
脳の中大脳動脈(黄矢印)に浅側頭動脈(白矢印)がバイパスされている。